未来へ…

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食堂へ顔を見せた大柄な男性スタッフが、美里へ声を掛けた。 「副主任、丁度良かったわ。 あなたの休憩終わりに、一緒に戻る様にしてくださいね」 「了解です」 「じゃあ、私は詰め所に戻るから。 お疲れ様です」 「「お疲れ様です」」 副主任へ正一を任せ、美里は食堂のスタッフ全員へ声を掛けた後… その場を去ろうとした。 彼女の背中を目にするなり、正一は無意識に声を上げた。 「ねえちゃん!」 「どうしたの?」 本来ならば、「主任と呼びなさい」と、たしなめなければならないが。 美里は某かを感じ取り、そうせずにいた… 「おいらが高校を卒業した時、ねえちゃんが嫁に行けてなかったら」 言葉を口にしながら、正一は美里の目の前に立った。 「責任もって、ねえちゃんを嫁に貰うっ!」 両手に拳を握り、一大決心のつもりで当人は口にしたのだが… 美里はポカンとし、周囲の者達は一瞬、固まり…直後。 「「ブフッ…」」 ほぼ同時に顔を見合わせて吹き出した。 「はれ?何で? おメッチャ決心して告白、したんだけどなぁ」 笑う周囲に正一は呆気にとられた。 「…アンタ、ね…」 美里は両手の人差し指をこめかみに当てている。 「どしたの?…ぅあ…」 ふと、目が合った。 その、顔が確実に怒っている。 「よ、く、もっ、! “行き遅れ決定”みたいにっ! えらっそうにっ! 未だ“三分の一人前”のクセにっ! 私を嫁にするなんて、百万年早いわよっ!」
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