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「私、あの花嫌いなんだよね」
佳代子が忌々し気に繰り返す。何か、花に恨みでもありそうな目で、テレビを睨みながら。
「あれ、雑草でしょ?雑草に好きも嫌いもある?」
「うん……なんて言うか、あれって確か外来種なんだよね。あとからきて、偉そうな顔でのさばってるところが気に入らないのかなぁ」
佳代子の棘をまとった言葉が、3人の間にじんわりと染み込む。
それは、よく言えば仲間意識、連帯感。悪く言えば、排他的。
「要は、石田帝国に見えるから嫌いってことね」
「そこまでは言ってませーん」
久美と佳代子が悪意も露わに言い合っているその顔は、とても美しいとは言えない。ただ、それを笑って受け入れる自分の顔も似たり寄ったりだろうと美穂は思った。
「石田帝国」とは、近所に越してきた石田絵里を中心とした、それの取り巻き達を皮肉った呼び名だった。
美穂たちが暮らすのは、ベッドタウンとしてここ10年ほどで急に開発が進んだ「ニュータウン」だった。
ただ、美穂たち3人は再開発される前から親や祖父母が住んでおり、それを引き継いで住んでいたから、自分たちこそがこの土地に根差しており、後から移住してきた住民たちは「外来種」のように思えていた。
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