アレロパシー

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「あ、私、あの花嫌い」  近所の主婦、3人で昼食を取っているときだった。3人とも、アラサーと呼ばれる年だ。  お昼のバラエティ番組が映ったテレビを、横目に見ていた佳代子がそう言った。  コの字でダイニングテーブルを囲み、佳代子の正面にいた美穂は、その言葉につられてテレビに目をやった。  見慣れたお笑い芸人が、屋外で中継している。  どこかの河原で秋晴れの空の下、美味しいお店がこの先にあるんです!とレポートしているところだった。 「花って?」  美穂の右となりでスパゲッティをフォークに巻いていた久美が、佳代子に尋ねる。 「ほら、ピンキー春山の背後にさ、わさわさ生えてるじゃん」 「え?あの……先っちょが黄色い、アレ?」 「そう」 「あー、あれ、よく見るよね。あちこちで」  美穂はそう言って、カルボナーラを口に入れる。最近の冷凍パスタは美味しくなったな、などと思いながら。
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