46人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ、私、あの花嫌い」
近所の主婦、3人で昼食を取っているときだった。3人とも、アラサーと呼ばれる年だ。
お昼のバラエティ番組が映ったテレビを、横目に見ていた佳代子がそう言った。
コの字でダイニングテーブルを囲み、佳代子の正面にいた美穂は、その言葉につられてテレビに目をやった。
見慣れたお笑い芸人が、屋外で中継している。
どこかの河原で秋晴れの空の下、美味しいお店がこの先にあるんです!とレポートしているところだった。
「花って?」
美穂の右となりでスパゲッティをフォークに巻いていた久美が、佳代子に尋ねる。
「ほら、ピンキー春山の背後にさ、わさわさ生えてるじゃん」
「え?あの……先っちょが黄色い、アレ?」
「そう」
「あー、あれ、よく見るよね。あちこちで」
美穂はそう言って、カルボナーラを口に入れる。最近の冷凍パスタは美味しくなったな、などと思いながら。
最初のコメントを投稿しよう!