42人が本棚に入れています
本棚に追加
スキー場で見た雪のように綺麗な形ではないけれど――
「僕は東京の雪も綺麗だと思ってます。啓大くんは今でも東京の雪は嫌いですか?」
「うーん、あまり好きではなかったけど……今日の雪は味方になってくれているみたいだね。この公園、もう俺たちしかいないよ」
そう言われて辺りを見渡すと、いつの間にか2人と2匹だけになっていた。視線を戻すと、啓大くんの顔はさっきより僕に近づいていた。
キス?
でもこの角度だとまた額だ。
多分誰にも見られないとはいえここは公共の場だし仕方ないかと諦める前に僕は啓大くんの首に手をまわした。啓大くんの唇を額ではなく唇で受けとめる為に。僕に触れたその唇は少し冷たくて、一瞬ピクリと震えて、でもぴったりと重なったまま数秒動かなかった。そのまま強く押し当てた後唇を離すと、啓大くんは言った。
「やっぱり純くんは時々大胆になるね」
「大胆な僕も好きなんですよね?」
「うん。大好きだよ」
今度は啓大くんの方から唇にキスしてくれた。
さっきより暖かくて、さっきより愛しい唇で。
そして静かに唇を離すと、啓大くんは僕の手を取った。
「さあ車に戻ろうか」
「はい。クロスケ寒くない?」
元気に答えたクロスケを抱いて立ち上がった僕は、啓大くんと手を繋いだまま駐車場に向かって歩き出した。東京の雪は、そんな僕らを優しく包んでくれていた。
―― 了 ――
最初のコメントを投稿しよう!