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それから月曜と水曜と土曜日にバイトすることになった。
月曜と水曜はずっとケイタくんと一緒。
この前はパートさんが都合悪くて代理で来ただけだったので、土曜日はそのパートさんと一緒だ。僕と同じ年の息子がいるそうで、とても可愛がってくれる。それに僕が直接聞けないケイタくんのことも色々教えてくれた。
「ケイタくんのお母さんが店長の知り合いで、人手不足だって言ったらこの子大学入るまで暇だからって連れて来てくれたんですって」
「そうだったんですね。え、でももう大学……」
「ええ、大学入っても続けてくれてるの。仕事出来るし、ルックスはいいし、ほんと助かるわ」
ケイタくんは高校3年生の冬にバイトを始めて、今は大学1年生らしい。僕より3つ年上だ。どこの大学に通っているのかもパートさんが教えてくれた。有名な大学だった。ケイタくんと同じ大学に入りたいなら、母に言われた通りちゃんと勉強しないとダメだな。
そしてバイトに慣れてきたある日、帰りのロッカーでケイタくんが言った。
「純くんって毎日夕飯作ってるんだって?」
え、どうしてそんなこと――ああ、パートさんから聞いたのか。
「毎日じゃないですけど、まあ基本作るのは僕です」
「へー、凄いね。バイトのある日も?」
「はい。母はもっと帰りが遅いんで」
「そっか、じゃあこれから帰ってもう1仕事か」
「いえ、今日は取引先の人と食事してくるらしいので、僕1人分だから適当です」
「お母さんが遅いから1人分って、純くんもお母さんと2人暮らしなの?」
「そうですけど……」
もって、ケイタくんも?
「じゃあ一緒に何処かで食べていかない? 俺奢るよ」
「え、いいんですか?」
「ああ。腹減ったから、早く行こう」
ケイタくんの笑顔に頷いて、僕は急いで着替えた。
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