第1章 僕の好きな人

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「この辺りなら純くんの方が詳しいよね。オススメの店ある?」 「すみません、あまり外食しないんで……」 「そっか。じゃあ……あそこ入ってみようか」 オシャレだなあと思いつついつも素通りしていたイタリアンレストラン。 窓際の席に案内された。並木道のイルミネーションが見える。デートみたいでドキドキする。 「何食べようか。純くん、嫌いなものある?」 「いえ、特に……」 「じゃあ俺ピザ選ぶから、純くんはパスタ選んでシェアしない? 俺も何でも食べられるから好きなの選んで」 「はい」 どうしよう。あんまり高いのは避けた方がいいよね。かといって一番安いの頼むのも失礼な気がするから……どうしよう、ケイタくん、どれが好きなんだろう。 「よし、ピザは魚介にする。パスタ決まった?」 「えっと、じゃあボロネーゼで」 「飲物はどうする?」 「水で大丈夫です」 「ホントに? 遠慮してない? まあ俺らケーキ食べすぎだからジュースは止めておくか」 ケイタくんもまだ二十歳にはなってないからお酒は飲めない。でもこういう店には慣れてるみたいだ。やっぱり彼女いるのかなって思ったけど、ケイタくんは家族のことを考えていた。 「ウチも母子家庭なんだけど母は全部自分でやりたい人で、食事は基本作り置きなんだよ」 「え、じゃあ今日の夕飯も作ってあるんじゃ……」 「ああ、冷凍だから大丈夫。外食じゃなくても違うもの食べたい時は翌日に回すことよくあるから」 「そう……なんですね」 それってお母さん、悲しまないのかな。 「純くんはいつもどんな料理作ってるの?」 「そんな大した物じゃ……昨日はハンバーグでした」 「大した物だよ。でも来週からクリスマスケーキの予約始まるから、バイト忙しくなるかもしれないよ」 ああそうか。いよいよ本格的にクリスマスがやって来るんだな。
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