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明日も早起きしようと言って兄と林は自分たちの部屋に戻り、僕と啓大くんも2人の部屋に戻った。
「啓大くん、今日は本当にありがとうございました」
「どういたしまして。役に立ててよかったよ。でも一緒にいてお父さんを思い出すって、俺老けてるのかな」
「僕が小さい頃だからそんなにオジサンじゃなかったと思いますよ。それに啓大くんが僕を子ども扱いしたんじゃないですか」
「抱えて滑ったのは確かにそうだけど、俺は純くんのこと子どもだとは思ってないよ」
「ほんとですか? すぐ可愛いって言うし、それって――」
「待って」
啓大くんは隣の部屋との境界の壁を見て、部屋に音楽を流してから答えた。
「見下してるつもりは全くなくて褒めているつもりだったけれど、純くんが嫌なら言わないように気を付ける。今も頭の中には浮かんでるけどね。可愛いなあって」
僕を見つめて、啓大くんは尋ねた。
「純くん、この話、この状況で続けて大丈夫?」
「この状況って……」
「俺たち今、密室で2人きりだよ」
そして2つ並んだそれぞれのベッドに向かい合って腰掛けている。
「俺がどんな風に純くんを可愛いと思ってるのか言ってもいいの? 俺の性癖知ってるでしょ?」
それって僕が恋愛対象になりうるってこと?
「で、でも啓大くんが好きなのは兄みたいなタイプじゃ……」
「違うよ。言ったでしょ、俺が好きになった彼はもういないって。もちろんもう嫌いってわけではないけれど、今はもっと好きな人がいる。その人を好きでいていいのかずっと悩んでブレーキをかけ続けてきた人がね」
好きな人、いるんだ。
期待に膨らんだ胸が一気にしぼんだ。いつもの僕ならここで諦めるけれど、溶ける間もなく降り続ける雪が勇気をくれた。
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