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「わかります。相手は大抵異性愛者ですものね。ジェンダーレスの時代だって言っても、生理的な嫌悪を抱く人の割合は昔とさほど変わらないと思います」
「純くんも正直気持ち悪いと感じてる?」
「いえ、僕は――」
俯いてしまっていた顔をあげて、ついに僕は言った。
「黙っててごめんなさい。実は僕も男の人が好きなんです。啓大くん、僕じゃダメですか? 僕はずっと――」
僕の体は啓大くんの長い腕に掴まれて、あっという間に抱き寄せられた。
「純くん、好きだよ。俺が好きなのは、純くんだ」
――え? え、本当に……!?
「俺の方こそ黙っててごめん。言ってはいけないと思っていた。だって君は同性なだけじゃなくて未成年で、しかも友人の弟だ」
そうか。啓大くんは、僕から見えていたよりずっと高い壁に阻まれていたのか。
「兄は僕の気持ち知ってて応援してくれています」
「え、そうなの?」
「はい。それに林も」
啓大くんは抱きしめていた僕を少し離して唖然とした顔で言った。
「じゃあこのスキー旅行って……」
「はい。もちろん自分が行きたかったっていうのもあるんでしょうけど、僕のことも考えてくれたんだと思います」
「それを知らなかったのは俺だけってことか」
啓大くんは再び僕を抱き寄せると、僕を抱えたまま自分のベッドに倒れ込んだ。
「今日大のやつ、知ってて俺たちを同室にしたのか」
「はい。でも兄は啓大くんも男性を好きだって確証はないはずだから、妹を男友達と同室にする程の覚悟ではないと思いますよ」
「あー確かに、もし妹だったら応援してても同室にはしないよな。それに俺に純くんを襲う度胸はないと思ってるんだろうな」
「僕たちのこと信じてくれてるんですよ、きっと」
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