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兄と林が自分たちの部屋に戻ると、啓大くんに小声で聞かれた。
「さっき今日大に何か言われた?」
「はい……上手くいっても簡単に体許すなって。このホテル、壁薄いのかな」
「いや、あいつは感がいいから、音楽流してるのが聞こえて内緒話してるとピンときたのかもしれない」
「別に許すとかってことじゃないと思うけど……やっぱり兄たちが隣の部屋にいると……」
「そうだね、我慢しよう。でも実は……今朝あの2人を部屋に入れたのは、純くんの寝顔にキスしたい衝動と戦っていたからなんだ。明日の朝は戦わなくてもいい?」
至近距離で囁かれて、心臓が跳ね上がった。
「い、いいですけど、そんなこと言われたら緊張して眠れなくなっちゃう」
「それは大変だ。じゃあおやすみのキスにしようか」
え、キス?
するの?
今?
啓大くんと?
ドキドキして啓大くんを見上げると、両手で頬を挟まれた。
思わず目を閉じると、啓大くんの唇が僕に触れた。
唇じゃなくて、額に。
「俺も男の子と付き合うのは初めてだし、ゆっくりいこう。あ、付き合うってことで……いいんだよね?」
「はい」
啓大くんは僕の返事に頷くともう一度キスしてくれたけれど、やっぱり額だった。
僕は少しがっかりして、でもそれ以上に幸せな気分になった。
そして僕たちは別々のベッドに入った。
「おやすみ」
「おやすみなさい」
でも眠れなくてそっと目を開けると、同じ姿勢で布団の中にいる啓大くんと目が合った。
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