第8章 雪の中で

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「眠れないですね」 「うん、もう少しこのまま話そうか」 ベッドに寝ころんだまま、僕らは付き合うにあたって具体的なことを話し合った。僕らが付き合うことになったことを今日大と林にはきちんと伝えるけれど、互いの親や他の友人たちにはまだ内緒にしておこうとか、人前でベタベタするのはやめようとかそういう話で、すり合わせるまでもなく僕らの意見は一致した。 「後はまあその都度考えよう。純くんも遠慮しないで言いたいことはきちんと言ってね」 「はい」 「じゃあ……寝ようか」 「そうですね。おやすみなさい」 「うん、今度こそおやすみ」 そう言って目を閉じてしばらくして目を開けるとまた目が合って笑って、もう一度目を閉じたら、目覚めたのは朝だった。 啓大くんは目を閉じていた。 「綺麗……」 目を開いていてももちろん美しいけれど、閉じていると長い睫毛がよく見える。思わずじっと眺めていたら、その瞼が開いた。 「うん……純くん……おはよう」 「おはようございます。今朝は僕が寝顔見せていただきました」 「もう我慢しなくていいのに見てただけ?」 そう言うと、啓大くんは再び目を閉じた。 え――おはようのキスのおねだり……? どうしよう、どこにしよう。 迷いながら顔を近づけて僕が瞼にキスすると、啓大くんは再び目を開いた。 「うん、いい目覚めだ。今日大たちも起きてるかな」 「林に聞いてみましょうか」 林はもう起きていたようですぐに返事がきた。
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