第1章 僕の好きな人

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「クリスマスってケーキ食べる人が多数派なんですかね」 「ああ……7割ってアンケート見たことあるな。俺は残りの3割の方だけど」 「えっ、食べないんですか?」 「うん。小さい頃カナダに住んでたんだけど、カナダではクリスマスにケーキ食べる習慣がなくて」 「へー、そうだったんですね」 僕はケイタくんがカナダに住んでいたという話に興味を持ったけれど、彼はケーキの話を続けた。 「日本に来て最初のクリスマスにあちこちの店にケーキが山積みになってるのに驚いて、母親に強請って買って貰ったんだけど、2人でホールケーキってキツいじゃん。翌年はもういいやって買わなくなった。純くんちは食べるの?」 「食べません」 「じゃあなんでさっき驚いた? あれ、聞いてた? ウチも母子家庭だって」 「聞いてました、そうじゃなくてあの、友達とパーティーとかするのかなって」 それか恋人と2人きりで食べるとか。 「パーティーねえ。俺そういうの得意そうに見える?」 「はい」 即答したら、ケイタくんは笑いながら首を振った後、少し寂しそうな顔になった。 「まあ断れなくて参加することもあるけど、凄く疲れる。ダメなんだよ。俺さ……」 何か告白が始まるのかと僕はドキドキしながら続きを待ったけれど、ケイタくんはすぐに元の笑顔に戻った。 「でも今年は食べるかもしれないな」 「ああ……売れ残ったら貰えたりしますかね」 「俺もこの時期のバイトは初めてだからよくわからないけど、ケーキ屋で働いてるのにクリスマスにケーキ食べないのはどうなんだって気もするし」 確かに。
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