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「あ、飛行機! うわっ、大きい!」
「空港が近いからね。ほら、降りて行くのが見えるでしょ」
「ホントだ、あそこが空港なんですね」
音が大きいしクロスケは怖がるかなと思ったけれど、慣れたユキオくんが落ち着いているせいか大丈夫だった。冷たい風が吹きつける冬の公園に人は少なく、僕らは一番見晴らしのいいベンチに並んで腰かけた。
「さっきより寒くなってきたね。ユキオ、純くんの足も温めてあげて」
モフモフのユキオくんが足元に寝そべってくれて、僕らはコートが触れ合うまで肩を寄せた。
「今日は違うけど、落ち込んだ時にここで海と飛行機を眺めていると安心するんだ。世界はここだけじゃない、海の向こうには色んな国があって飛行機に乗れば別の国に行けるんだってね」
それってどういう……
「啓大くん、海外に行っちゃうの?」
「いや、可能性の話。もしもこの国で幸せになれなかったら、別の国に行けばいいって考えると安心出来ない?」
理屈はわかるけれど、僕にはあまりピンと来なかった。
「僕、飛行機に乗ったことないし、英語も話せないし――」
「怖い?」
「……はい」
正直に答えると、啓大くんはポケットから何か取り出した。
「これ受け取ってくれる?」
掌に収まる小さな箱。まさか指輪!?
「さ、流石にそれは――」
「まあ開けてみてよ」
僕は恐る恐る箱を手に取り開いてみた。
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