第2章 クリスマス

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母が付き合っているらしい男性とは、結局まだ会っていない。 僕が指定した日曜日には先方の都合が悪かったみたいで、それ以来母は何も言ってこない。僕が今更父親なんていらないと思っている以上に、その人だっていきなり大きな息子なんていらないと思っているんじゃないかな。 でもまた会って欲しいって言われるかもしれないから、出来るだけ家にいなくてすむように、クリスマスまで日曜にもバイトすることにした。ケイタくんも一緒だ。 「純くん、お金貯めて何か買いたい物とかあるの?」 「今は特に……そのうち使いたくなった時の為に貯めておこうかなってだけです」 「そっか、しっかりしてるね」 「いえ、そんなこと……休日に家にいたくないっていうのもあるんです」 「あー、わかる。母親と2人だと時々息苦しくなるよな」 えっ、ケイタくんもそういうことあるんだ。 「だからって外に遊びに行くとお金掛かるしね」 「そう、そうなんです!」 ああ、分かってくれる。凄く嬉しい。 そう感じながらケイタくんを見上げていたら、顔を覗き込まれた。 「なるほどね。でもそれだけ? 他に何か悩んでたりしない?」 「え、なんでそんなこと――」 「ちょっと目がウルウルしてる」 え、嘘、なんで?  僕、今嬉しいのに。 「店長が心配してたよ。土日入ってくれるのは助かるけど、何か問題抱えてるのかしらって」 それって経済的に困窮してると思われてるのかな。 「そんなことはないです。ケイタくんは、店長に頼まれて日曜にも来ることになったんですか?」 「うん、まあね。それに――いらっしゃいませ」 ケイタくんが何か言いかけたところでお客さんが来て、話が途切れた。その後も接客に追われて、結局続きは聞きそびれてしまった。
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