第1章 僕の好きな人

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それから母と2人で生きてきた。 家に帰るのは僕の方が早いから、夕飯は僕が作る。 僕を独りで育ててくれている母を助ける為と言うより、母の帰りを待っていたらお腹が空いてしまうから。 でも今日はその前に、お菓子を食べちゃおうかな。 白いオバケのアイシングクッキーと、黒い猫のチョコレートクッキー、それにオレンジかぼちゃのキャンディ。 どれも可愛い、どれから食べよう。 母にもあげようかな。 いや、何処で買ったのとか聞かれたら変なこと言っちゃうかもしれないから止めておこう。僕が男の人を好きだなんて誰にも、特に母親には言ってはいけないことだ。 だけど本当に可愛かったなーって小悪魔な彼を思い出す。結構年上だと思ってたけど、そうでもないのかな。 何歳なんだろう。 何処に住んでるんだろ。 知っても何も出来やしないけど、知りたくなっちゃう。 せっかくだからお茶をいれようと立ち上がったら携帯が鳴った。 僕に電話してくる相手なんて母しかいない。言われることも大体1つだ。 『(じゅん)、もう夕飯の支度しちゃった?』 「まだだよ」 『そう。じゃあ私の分はいらないわ。今夜、ちょっと遅くなるかも。ちゃんと鍵掛けて寝てね』 「うん、わかった」 最近多いな。仕事忙しいのかな。 1人分だけ料理を作ると食材の計算が狂うから、明日に回してラーメンを食べた。急いで食べる必要はなくなったお菓子は食後に食べたけれど、大きくて分厚いクッキーは1枚でも食べ応えがあった。 1袋、3枚入り。オバケちゃんと猫ちゃん、1枚ずつ食べたらお腹も心も満たされてしまったから、残りは1枚ずつチェンジして2種類セットの袋を2つ作った。1つは明日の自分用。もう1つはやっぱり母にあげよう。
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