第1章 僕の好きな人

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母は11時過ぎても帰らなかったので、メモを添えたクッキーをテーブルに置いて眠ることにした。 お疲れ様 ハロウィンの残りものだけどクッキーどうぞ お休みなさい そして夜が明けた。 目覚めてキッチンに行くとパンとバターの匂いがした。 「おはよう」 「おはよう、調度焼けたわよ」 僕が眠っている間に帰って来た母が差し出した皿を受け取ってテーブルに運ぶ。スープが入ったマグカップを手に母もテーブルにやって来て2人で朝食を食べ始めた。 「純、クッキーありがとう。お友達とハロウィンパーティーしたの?」 「そういうわけじゃないけど、まあ……」 「可愛いクッキーね。もしかして女の子から貰った?」 「ち、違うよ、そんなんじゃない」 強く否定しすぎたら、顔を覗き込まれた。 「なんか怪しい。隠すことないじゃない。ねえ、純にも好きな人がいるの?」 本当のことも嘘も答えたくないから黙っていたら、思わぬ方向に話が進んだ。 「あのね、実は……母さんには好きな人がいるの。それで……とりあえず一度純にも会って欲しいなって……今日か明日って――」 「ごめん、どっちも予定がある」 ああ、結局嘘を答えてしまった。 「そ、そう……いいの、ごめんなさい、急には無理よね。じゃあ来週は――」 「わからない。僕もう行かなきゃ、ご馳走様」 嘘を重ねて、僕は家を飛び出した。
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