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母は11時過ぎても帰らなかったので、メモを添えたクッキーをテーブルに置いて眠ることにした。
お疲れ様
ハロウィンの残りものだけどクッキーどうぞ
お休みなさい
そして夜が明けた。
目覚めてキッチンに行くとパンとバターの匂いがした。
「おはよう」
「おはよう、調度焼けたわよ」
僕が眠っている間に帰って来た母が差し出した皿を受け取ってテーブルに運ぶ。スープが入ったマグカップを手に母もテーブルにやって来て2人で朝食を食べ始めた。
「純、クッキーありがとう。お友達とハロウィンパーティーしたの?」
「そういうわけじゃないけど、まあ……」
「可愛いクッキーね。もしかして女の子から貰った?」
「ち、違うよ、そんなんじゃない」
強く否定しすぎたら、顔を覗き込まれた。
「なんか怪しい。隠すことないじゃない。ねえ、純にも好きな人がいるの?」
本当のことも嘘も答えたくないから黙っていたら、思わぬ方向に話が進んだ。
「あのね、実は……母さんには好きな人がいるの。それで……とりあえず一度純にも会って欲しいなって……今日か明日って――」
「ごめん、どっちも予定がある」
ああ、結局嘘を答えてしまった。
「そ、そう……いいの、ごめんなさい、急には無理よね。じゃあ来週は――」
「わからない。僕もう行かなきゃ、ご馳走様」
嘘を重ねて、僕は家を飛び出した。
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