第1章 僕の好きな人

9/17
前へ
/171ページ
次へ
母に言わないとダメか。 許して貰えなかったらどうしよう。 何て言おうか考えながら家に帰ったら母が笑顔で出迎えてくれたけれど、なんだか少し寂しそうに見えた。だから思わず言ってしまった。 「今日はごめん。来週の日曜ならいいよ」 「会ってくれるの?」 「うん、日曜ならね。土曜日は僕、バイトを始めようかと思ってるんだけど、やってもいい?」 「急にどうしたの? お小遣い足りない?」 「そうじゃなくて、あの……今日会ってた友達がバイトしてる店が人手足りないらしくて……ケーキ屋さんなんだ。だからクリスマスまでとっても忙しくて手伝ってくれないかって頼まれて……」 友達じゃなくて、今日名前を知った片思いの相手だけど、それ以外は本当のことだ。ドキドキしながら返事を待ったら、母は頷いてくれた。 「ちゃんと勉強もするって約束なら、いいわよ」 やった、許可して貰えた! 翌日早速店長さんに連絡したら、明日からでも来て欲しいと言われた。 『月曜ならこの前会ったお兄さんに仕事教えて貰えるけど、どうかしら?』 「はい、じゃあ明日行きます」 即答してしまった! ケイタくんに仕事教えて貰えるなんて夢みたい! 嬉しくて、でもちょっと不安で、僕はなかなか眠れなかった。
/171ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加