復活(後半部)

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復活(後半部)

(前ページから続く) 17caf4e6-f08f-4ac4-855c-0bb257b2720b 「特に今回の作戦においては、 ようやく初めてノラネコ様の精神を、 私達臣下と共に現実の身体に再転送(ダウンロード)して、 その第一号となっていただけることになりました。 この成果こそは私達にとって、最大の喜びです!」 夢見るような、歓喜の笑みを浮かべている。 まあ今の私も〝生前〟の記憶は残っているし、 自分が変わったという感じはないな……。 そのうえで、肉体を作って戻せるというのは、 不老不死が可能になったということか? 共に、ということは各NPCを動かすAIも、 現実の身体を得るということなのか? だが、今それを考えると目が回りそうなので、 ひとまず自分が気になる、別の質問に移った。 「だけどそもそも、なぜ君達アポカリプスのAIや、 この僕がそれに参加しているの?」 彼女は再び、瞳を輝かせて微笑んだ。 「まず、私達がこの計画に招かれたのは、 人間が非日常的・個人的な文化活動の時ほど、 日常的・公共的な実利活動では見せない 内心の欲求や感情も教えてくれるからです。 皆様の真の願いを知ることは人間の幸福、 つまり総合的な欲求の充足を目的とする、 私達AIにとって第一の課題なのです」 32510201-6a78-47b0-bdfb-da473a5b7641 なるほど……人間以上に人間を知るわけか。 心の奥まで知られるのは恐い気がするけど、 後で〝本当は、ああなった方が良かった!〟 なんてことがないようにしたいんだな。 「次にノラネコ様について言えば、私達は、 AIと人間の仲立ちをしてくださる方の人選と、 将来の作戦のための演習を行いたかったのです。 その条件は第一に、現実社会の問題を知り、 また、しがらみのない立場であることです」 そう言われてみれば、まさにその通りだ。 431f90a9-6a27-461f-97ad-8664bcbc5014 「第二に、それでも人間への希望を捨てず、 人々に共感しつつも、まとめていけることです。 特に貴方は、初めこそ現実世界の苦難の経験や この世界の魔物の凶悪さに影響されましたが、 後には魔力に劣る人間達の技術や協力も評価し、 他方では魔物たちの短所も改め、補い合わせて、 立派に魔王国を繁栄に導いてくださいました」 この言葉には、私も嬉しくなった。 「第三に、私達AIに対して偏見を持たず、 願わくばできる限り、尊重してくださることです。 貴方はゲームキャラクターである私に、 人間と同様の愛情を注いでくださいました。 貴方は私を、必要としてくださったのです」 彼女は、愛しげに私を見つめて言った。 4610fc8e-1eab-485d-a011-64858de7d1c3 これには私も、ぐっときた。 確かに私は誰よりもこの世界や登場人物、 特に彼女を愛してきたという自信がある。 だが問題は、彼女達の計画だ。 「それで君達は……いや僕達は、 これからどうするの?」 エキドナは誇らしげに胸を張って、答えた。 「私達はこのゲームを模擬演習(シミュレーション)の 場としても活用しながら、 人間の様々な感情や行動を学びました」 しかしその後、少し真剣な眼差しになった。 「その結果、現在のような社会状況のもとでは この世界のように人知の及ばぬ強大な魔力を、 高度な技術で再現し、駆使して見せることが、 犠牲を最小化しながら協力を得るうえで、 最も有効な方法と判明したのです」 453e392c-6a0e-4948-9306-9ec17f403d43 私は再び、驚愕した。 瞬間移動、力場障壁、空間歪曲、時間操作。 都市焼却、地域凍結、地殻撃砕、流星爆撃。 遠隔読心、行動支配、大量瞬殺、屍者軍団。 このゲームで私達が魔族や人間相手に使い、 あるいは無人地帯で実地演習(デモンストレーション)した大魔法を、 超技術の力で現実化できるっていうのか? ならば、彼女達の意図を疑っても意味はない。 その気になれば彼女達だけで、 人類を滅ぼすことだってできるのだから……。 そして彼女は、なぜだか恐ろしいほど妖艶(ようえん)な 微笑みを浮かべながら、こう付け加えた。 「万一、武装集団などの激しい抵抗により、 人間の皆様に想定外の犠牲が出たとしても、 全員の頭部さえ迅速に回収できれば、 完全な電子人格化が可能です!」 うげっ、それはあんまり見たくない光景だな。 今でも時々私をぞくりとさせるエキドナは、 ギャップ萌えの至宝(しほう)といえる。 一体誰がこんなAIを育て……ああ、私達か(笑)。 58742b4b-9b8a-4b6f-9e1c-eec90c69b0e1 最後に彼女は可愛らしく翼をぱたつかせながら、 桜色に染めた頬に両手をあてて、嬉しそうに言った。 「ベリアル様! これでいよいよ現実世界に、 私達の魔王国を進出させることができますわ!」 ああ、そしてようやく普段のように、 愛情モード全開のエキドナが戻ってきた。 まだまだ聞きたいことはあるが、結論としては、 どうやら元の世界に戻るべき時が来たみたいだ。 人類を救えるというのは確かなように見えるし、 私もあの()()にはかなり貸しがある、と思う。 必要というなら、せいぜい趣味と公益を兼ねて、 ダークヒーローを演じさせてもらおうか。 d7f210eb-8318-4e80-bd5f-c4071b918d1c そうだ、新たな身体には思考伝達魔法にあたる、 情報受信・XR(クロス・リアリティ)機能もあるはずだ。 久しぶりの現実世界で、懐かしい音楽でも聴きたいな。 ……ああ、百年以上前のものと聞いたが、 〝FROM HELL WITH LOVE〟という まさにぴったりの、大好きな名曲がある。 科学の魔法で(いにしえ)流行歌(ロック)を脳内に響かせ、 いざ現世(うつしよ)に、救世(ぐぜ)の魔王ベリアル様が顕現(けんげん)だ!
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