あの日の金色

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 暗闇から現実に戻ったら、そこは真っ白な病室だった。  「良かった、結衣。目が覚めたのね」  母親が私に近寄り、優しく頭を撫でる。  「私どうなったの?試合は?」  冷や汗が全身から溢れながら、母親の腕を強く掴んだ。  後ろでカルテを持った医師が言葉を選びながら、ゆっくりと説明する。   「足の怪我の痛みで一時的に気を失い、そのまま病院に運ばれたんです」  「……足の怪我?」  「左足の前十字靭帯損傷(ぜんじゅうじじんたいそんしょう)ですね。かなりの重症です」  「ぜん、じゅうじ?」  聞きなれない単語に耳を疑い、心拍数が跳ね上がる。  「簡単に説明すると、膝の靭帯の損傷です。今は鎮痛剤で痛みを止めていますが、しばらく痛みが出るでしょう」  私は自分の左足を何度も擦った。痛くないことを主張しようとしたのに、奥深くで鋭い痛みを感じ、顔を大きく歪ませる。夢じゃないことを痛みで実感し、思わず涙目になった。  「バレーはできますよね?」  「再び激しい運動を行いたい場合は手術をする必要があります」  「手術?」  「はい。その後にリハビリを1年以上継続し、根気強く治療する必要があります。前のようにプレーできるかは正直分かりません」  「そんな」  心臓がぎゅっと掴まれて、そのまま握りつぶされそうだった。  手術なんて人生で一度もしたことがない。  それに1年以上もバレーができないなら……実業団のスカウトの件だって全て白紙だろう。  プロを目指す人たちがバレーの腕を必死に上げている中、私は一人で長い間リハビリをして、再びプレーできる保証もない。  黒木選手と同じコートに立ち、一緒に金メダルを取りたいだなんて、無理な夢だったのか。   全てがゼロになった今、再びバレーをやる意味って何だろう。  「手術をさせてほしい」と即答したかったが、どうしたらいいのか全く分からなかった。  
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