あの日の金色

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 あの日から2か月。日常生活は支障がなくなり、松葉杖がなくても歩けるようになった。  美里とはクラスが違うため、あれから一度も顔を合わせていない。廊下ですれ違うことはあったが、お互い目を逸らしていた。  部活も行っていないため、バレーから距離を置いた生活を続けていた。バレー部はインターハイ2位という輝かしい結果を残したらしい。美里などの進路がすでに決まっている3年生は、1月に行われる春高に向けて今も練習している。  私は未だに、手術をする勇気がなかった。  何をしても楽しくなく、生きた心地のしない毎日だ。  抜け殻のまま、混み合う駅に向かい、いつもの通学電車に乗り込む。  座った途端、一気に眠気が襲ってきて思わず目を閉じた。怪我をしてから、眠りが浅いせいだろう。足の痛みは引いたはずなのに、足が気になって目が覚めてしまう。  小刻みに揺れる電車の振動が心地よく、久しぶりにぐっすり眠っていた。      
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