あの日の金色

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 「お客さん起きてください」  「……え?」  「終点です」  目を開けると駅員の男性が困った顔をしながら見ていた。周りを見ると、車内には誰もいなかった。  「終点?」  「いいから、早く降りてください。電車が出られないので」  駅員の男性に急かされて、状況が読めないままホームに降り立つ。  私が下りた瞬間、電車は光の速さで走っていった。竜巻のような風に驚きながらスカートを抑えて、辺りを見渡す。  ここは一体、どこだろう。  頭上の大きな電光掲示板には「池袋駅」と書いてある。  てっきり寝過ごしたと思っていたが、学校の最寄り駅だった。  安心しながら歩いていたら、ふと電光掲示板に流れる文字に目が止まる。    「本日2025年9月20日、東京の天気は晴れ」  全ての思考が停止して、何度も目をこする。しかし、何度確かめても同じ文字が流れてくる。  2025年?今は2022年のはずだ。どうして3年も進んでるのだろう?  バッグからスマホを取り出し、日付を確認しようとしたが電源が入らない。  夢かと思い、頬を強くつねってみたが、確かに痛い。  電光掲示板が壊れたのだろうと思い、急ぎ足で東口を出た。  知らない間に駅の外観が綺麗になった気がして、思わず立ち止まる。新しいビルが建ち並び、見たことのない公園ができていた。  今すぐ誰かに話を聞きたいが、忙しなく歩く人ばかりで声をかけられない。  人は多いのに、自分が一人ぼっちになった気がして、途方に暮れる。    「お嬢さん」  後ろからしわがれた声がして、思わず振り返る。見てみると、80代くらいの老婆がこちらを不思議そうに眺めていた。古びた机の前に座り、その机の上には「占い」と書かれた札と水晶とタロットカードが置かれている。  私は飛びつきそうな勢いで老婆に駆け寄った。                                           
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