あの日の金色

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 リボンがふわりと地上に舞い降りた先は、住宅地の中だった。  目の前には年季の入った市の公民館がある。部活の練習でたまに訪れていた場所だが、どうしてこの場所に連れてこられたのか分からない。    「ここで……いいの?」  息を切らしながらリボンに尋ねても、当然返事は返って来なかった。  仕方がないので、おそるおそる薄暗い室内の中に入ってみる。  受付をこっそり覗いてみたが、休憩中なのか誰もいない。  人と話せない私には好都合だと喜びながら、慎重に奥へと進む。  廊下に貼られてある室内図を見ようとしたとき、聞き慣れた声がした。  ……美里と私の声?  心臓の鼓動が一気に跳ね上がり、リボンを握る手が震える。  未来の美里と私がここにいるの?  3年後ということは、私たちは大学3年生ということになる。一体ここで何をしているのだろうか。  声は2階の体育館から響いていた。  ゆっくりと足を動かし、階段に向かう。一段上っては立ち止まり、また立ち止まり、深呼吸をしながら前に進んだ。頭上から降り注いでくる美里と私の声がどんどん近づいてくる。膝に鈍い痛みを感じながらも、なんとか長い階段を上り切った。  目の前には白く大きな体育館の扉がある。私は汗ばむ手で静かに取っ手を握り、思いっきり引いた。重い扉がゆっくりと開き、隙間から光が差しむ。  そこにはネットが張られたコートと、少し大人びた2人の女性が立っていた。
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