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━━「これ、お前みたいじゃない?」
ネコのキーホルダーを手にして可笑しそうに肩を揺らす宗隆に、最初は何のことだかさっぱりわからなかった。
くりくりでちょっと間抜けな目が印象的な、ふわふわの毛で出来ている可愛いネコのモチーフ。
見た目の話? 間抜けそうなとこ? 自分じゃわからなくて眉をしかめた僕に宗隆は、
「いっつも爪研いでるから、お前」
そう言って笑った。
買ってやるよ、玄野だから黒いやつな、と黒ネコを手にした宗隆に、じゃあ宗隆は城崎だから白ネコだよ、と僕もそれを手にして。
こんなに小さくて他愛ないお揃いでも、嬉しくて嬉しくて。互いの部屋の鍵に付けたそれをその日は一日中幸せな気持ちで眺めた。
「ん……っ、宗隆……っ、ぁ…っあ…っ」
ぎゅっと抱き締める背中に回した手に、力が籠る。
今日はちゃんと気持ちいい。痛いよりも気持ち良いが強くて、僕は気を抜けばもっと上がりそうになる声を必死で堪える。
「いっていい?」
聞こえた声に薄く目を開ければ、壮絶な程の色気を纏った宗隆の、余裕のない表情が目に入った。
小さく頷く僕に、少しだけその動きが速くなる。
「……っ、ん、いく……っ」
一際奥を突いた宗隆の汗ばんだ背中が微かに震えて、薄いラテックスの膜越しに熱が注がれるのを感じた。同時に張り詰めた僕の中心も宗隆の手で扱かれ、あっと言う間に熱を放つ。
宗隆の重みを全身で感じながら、はぁ……と息を吐いた。
もう一度視界に入ったテーブルの上に二匹並んだネコは、まるで好き合っている恋人同士のように見えた。
繋がったまま身を寄せ合う僕達も同じ。満たされていく心と身体の中で、あのネコたちみたいだと、そんな風に思っていた。
あの頃はいつも、宗隆が傍にいた。
宗隆の心が、僕の傍にあった。
ねぇ、宗隆。僕の心は今もあの頃と何も変わらないよ。
二匹のネコは今、僕の鍵の傍で寄り添っている。
決して埋められることのない淋しさが、揺れて溢れて今も━━……
僕の傍に、寄り添っている。
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