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『終わり』を意識し始めるようになったのは、いつの頃からだっただろうか。
付き合って二年を過ぎた頃から、僕達の間には友達に『戻った』ような空気が漂うようになった。大学時代の緩い友人関係のような空気感。それでも、抱き合えている内はまだ良かった。
それまでは週に二回くらいはしていたセックスが、段々と二週間に一回になり、さらには月に一回になっていった。
身体だけが欲しいんじゃないんだ。現に、付き合いが長くなって、宗隆といることが自然になってきた。それはいいことなのだろう。……そう思うようにしても、どこか淋しい気持ちは拭えなかった。
それでも相変わらず僕は、いつそうなってもいいように二人で逢うときにはちゃんと準備をした。……でも結局、だらだらとテレビを見た後に何もなく背を向けて寝始める宗隆の寝息が深くなった頃に、一人トイレでローションを掻き出すことだけが増えていった。
虚しさに滲む涙を、何度も拭った。
二人で逢っていても、身体を重ねないことのほうが多くなっていって━━。
気づけば、最後にしてから半年以上が経っていた。
どうしてそうなってしまうのか、分からないことが一番苦しかった。
無口な宗隆の考えることが、少しずつ少しずつ分からなくなっていった。
訊くことは怖かった。
男と付き合っていることを後悔していると言われることが、何よりも怖かった。
この頃には僕も不安と淋しさで、おかしくなっていたのだと思う。
僕にとって合鍵は、彼の傍にいる自分だけの特権で、くすぐったくて幸せなものだった。
宗隆が帰ってくる前に部屋に上がって、宗隆の香りがする部屋で「おかえり」を言えること。それが何より嬉しかった。
不安を感じるようになってからは、わざと連絡をせずに宗隆の家に押し掛けるようになった。
合鍵を使い、誰か僕以外の人の痕跡がないかを必死になって探した。誰も訪れた形跡がないことを確かめることで、かろうじて心の安定を保っていた。
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