『猫に合鍵』

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「んっ……、ぅ……っあ……っ」 今まで一度だって強引なことをしなかったのに。 なんで、こんな風に。最後だから? 「あっ、ぁっ、ぁあ……っ、それっ、ダメ……っ」 後ろから伸びて来た手が硬くなった胸先を撫でる。同時にとろとろと透明な蜜を溢す、僕の前も優しく握り込まれる。 声が響く、彼の詰めた息が耳元を撫でる、後ろで痛みと快楽が()いまぜになった熱が揺れる。 気持ち良い。 気持ちが良くて、切ない。 目を閉じて、僕を貫く熱に集中する。 少しずつ少しずつ、激しい快感が僕を波の高みへと連れていく。 涙が、溢れる。 「……澪人」 そんな、優しい声。 「……っ」 「いきそう?」 コクコクと頷けば、貫く動きと前を扱く手の動きが速くなった。 「んっ……、ぅ…っあ……っ、んん……っ」 僕が自分の手首を噛まないようにと咥内に差し込まれた彼の長い指 微かにバニラの香りが鼻へと抜ける。 彼が好きな香り。 僕が大好きな、彼の香り。 噛みつく訳にはいかなくて、苦しさと快感に舌を絡ませる。口の端から飲み込み切れない唾液が零れ落ちていく。身体を濡らす水滴と汗に混じって、何もかも湯槽の中へと消えていく。 前も後ろもぐちゃぐちゃで、同じくらい頭の中もぐちゃぐちゃで。 なんで、これが最後なんだろう。 まだこんなに、こんなに僕は宗隆を全身で求めているのに。 「あ……っ、い……く……っ」 「ん……っ、いって、澪人」 腰の奥からせり上がってくる感覚が、先端に集まって放たれる。 背を反らし宗隆の掌に熱を放った僕は、くったりと浴室の壁にもたれかかった。 「……ベッド行こう。澪人」 「……ぁ…っ」 ずるりと宗隆が身体を離れていく、それだけの刺激に僕はまた身体を震わせる。 この一瞬でも、宗隆の体温が離れていくのが嫌だった。 ……このまま時間が止まって欲しいと、心から思った。
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