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【 異国の地 】
彼女が初めてバックウェルさんの家に来たのは、今から1か月以上前の7月24日。
異国から来た彼女は慣れない英語で、頬を赤らめながら僕たちにこう言って深々と頭を下げた。
「マイネームイズ Hikari Sonoda(園田 光莉)。 ナイストゥミーチュウ」
「Hi! アイム、ウィレム(Wiremu)。これから1か月よろしくね」
「えっ? 日本語、お上手ですね……」
「YES、小さい頃から日本語を母から学んでいたから」
僕が小麦色の右手を差し出すと、彼女は恥ずかしそうにその白くて小さな手を差し伸べた。
日本人の肌はイエローだって思っていたけど、彼女はこの島に住んでいる白人とあまり変わらないようだ。
笑顔でバックウェルさん夫婦と慣れないハグをしている姿に、なぜだか胸がときめいた。
彼女の仕草になぜだか不思議と懐かしさを感じる。
大きなスーツケースを彼女から受け取ると、家の中を案内しながら彼女の泊まる部屋へと運んだ。
「ここが、光莉の部屋だよ」
「うわぁ~、こんな素敵なお部屋を用意してくれてありがとうございます。ウィレムさん」
「ははは、僕が用意した訳じゃないけどね。あと、敬語は使わなくてもいいよ。僕も光莉と同じ高校生だから。名前もできればウィレムでお願いしたいな」
「あっ、すみません。ウィレム……」
「ははは、それでOK!」
「まだ慣れないね。うふふっ」
僕たちは思わず互いの顔を見ながら吹き出した。
何だか、光莉とはいいお友達になれそうだ。
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