【 異国の地 】

1/1
42人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ

【 異国の地 】

 彼女が初めてバックウェルさんの家に来たのは、今から1か月以上前の7月24日。  異国から来た彼女は慣れない英語で、頬を赤らめながら僕たちにこう言って深々と頭を下げた。 「マイネームイズ Hikari Sonoda(園田 光莉(そのだ ひかり))。 ナイストゥミーチュウ」 「Hi! アイム、ウィレム(Wiremu)。これから1か月よろしくね」 「えっ? 日本語、お上手ですね……」 「YES、小さい頃から日本語を母から学んでいたから」  僕が小麦色の右手を差し出すと、彼女は恥ずかしそうにその白くて小さな手を差し伸べた。  日本人の肌はイエローだって思っていたけど、彼女はこの島に住んでいる白人とあまり変わらないようだ。  笑顔でバックウェルさん夫婦と慣れないハグをしている姿に、なぜだか胸がときめいた。  彼女の仕草になぜだか不思議と懐かしさを感じる。  大きなスーツケースを彼女から受け取ると、家の中を案内しながら彼女の泊まる部屋へと運んだ。 「ここが、光莉(ひかり)の部屋だよ」 「うわぁ~、こんな素敵なお部屋を用意してくれてありがとうございます。ウィレムさん」 「ははは、僕が用意した訳じゃないけどね。あと、敬語は使わなくてもいいよ。僕も光莉と同じ高校生だから。名前もできればウィレムでお願いしたいな」 「あっ、すみません。ウィレム……」 「ははは、それでOK!」 「まだ慣れないね。うふふっ」  僕たちは思わず互いの顔を見ながら吹き出した。  何だか、光莉とはいいお友達になれそうだ。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!