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【 異国の人 】
――翌日、光莉にとっての初めての登校日。
僕らの通う学校は、家からスクールバスに乗って30分ほど行った公立高校『ファンガパラオア・カレッジ(Whangaparaoa College)』だ。
昨日の私服姿の光莉も素敵だが、制服姿の光莉もまたキュートだ。
バスに乗る時に、緊張している光莉に手を差し伸べた。
少し戸惑いながらも僕の大きな手の平に、その小さな手を恥ずかしそうにそっと重ねた。
バスに乗っている同級生たちは、異国から来た彼女にざわつきを隠せないでいる。
僕らは空いている2つ並びの席に着いた。窓際の席に座った彼女は、車窓の景色に目を輝かせている。
笑顔で胸に手を当てて、ドキドキする気持ちを抑えているように見えた。
学校へ到着すると、早速、同級生たちが声をかけてくる。
僕の隣を歩く見慣れない色白のかわいらしい東洋人に、皆興味津々だ。
僕と光莉は、同じクラス。ダニエル先生に光莉を紹介して教室へと戻ると、チャイムと共にふたりが教室へと入ってきた。
「Nice to meet you. My Name is Hikari Sonoda」
ペコリとお辞儀をした光莉を見て、クラスメートはそれぞれに彼女に声をかけて受け入れてくれた。
僕の右斜め後ろの席に座ると、皆が物珍しそうな表情で彼女をざわざわしながら見つめている。
皆の熱い視線に、光莉の白い頬が赤くなっていくのが分かった。それがなぜかかわいらしく見える。
このクラスで日本語が話せるのは僕くらい。だから、僕が彼女を守ってあげたいとこの時思った。
9千キロ以上離れたこの異国の地、ニュージーランドで今、光莉は小さな、いや大きな一歩を踏み出した。
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