【 留学生 】

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【 留学生 】

 ファンガパラオア・カレッジでは、毎年日本からの短期留学生を受け入れている。  代わりにこの学校からも日本へ留学する人もいる。僕も日本にはとても興味があるが、光莉のように一歩踏み出せない自分がいる。そういう意味で光莉が一人で異国の地へ踏み出したのは、本当にすごいと思う。  僕も本当は日本に行きたい。  その理由は――。  授業が終わる度に、光莉の席の周りに人が集まってくる。彼女はずっと笑顔だが、ずっと顔も赤い。  そりゃそうだろう。こんな異国の地にやってきて、いきなり見ず知らずの高校生たちに囲まれ、異国の言葉で質問攻めを受けるのだから。  光莉は片言の英語で頑張って会話をしようと必死だ。  時折、僕の方をチラリと見ては、目が合うと視線を逸らす。  ――あっという間にお昼になり、僕は光莉を食堂へ誘った。  彼女は「ありがとう」と恥ずかしそうに、僕の隣へピタリと着いて離れない。  廊下をすれ違う人は、見慣れない異国の人に次々と声をかけてくる。  光莉もそれに合わせて、「Hi!」と手を軽く上げながら答えていた。  食事を取りながら、彼女に初めて訪れたこの学校の印象を聞いてみた。 「光莉、どう? この学校の雰囲気は?」 「うん、とてもみんなフレンドリーですごいね。日本の学校だったら、遠巻きにされそうだけど、こっちの学校ではみんな気軽に声をかけてくれる」 「この学校は留学生にも慣れているからね。光莉もすぐに溶け込めると思うよ」 「そうだといいな。うふふっ」  食堂でも僕らふたりが日本語をしゃべっているのを、周りの人の目には仲の良いカップルのように映っていたかもしれない。  皆の視線がとても熱く感じる。  食堂の大きな窓から差し込むこのファンガパラオアの日の光に、彼女の笑った顔が重なり合い、とても眩しく思えたことを僕ははっきりと覚えている。
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