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【 日本人の血 】
僕が踊り終わると、代わりに彼女が日本の伝統的なものを見せたいと言う。
「ウィレム、ありがとう。私も日本から持って来ているものがあるから、それを見せてあげるね」
「んっ? 何だろう?」
「ちょっと待ってて」
そう言うと彼女は一度、自分の部屋へ行き、あるものを持ってきた。
それはとても小さく細長いもの。
「これ、見てて」
彼女は浴衣姿のまましゃがみ込み、その紐状のものの先端に火をつけると、それは一瞬パチパチと光を放ってから、ジジジとオレンジ色の玉を作った。
しばらくして、パシャパシャと小さな音を立てながら、稲妻のような黄金色の光を放ち、右に左に飛び散った。
「うわぁ~、綺麗だね。これは何て言うの、光莉?」
「うふふっ、これはね、日本の線香花火っていうものなの」
「線香花火?」
「うん、日本では夏になるとみんなこの小さな花火を最後に楽しむの」
「そうなんだ」
僕が光莉の前でしゃがみ込むと、その線香花火の先端がポトリと地面へと落ちた。
「あっ、落ちちゃった……」
「うん、これでおしまい……」
「綺麗だけど、最後は静かに消えるんだね」
「うん、少し切なさもあるでしょ?」
「そうだね。これが日本の花火か。僕もやってみてもいい?」
「うん、まだあるからいいよ。はい」
彼女から線香花火を受け取ると、僕も火をつけた。
真っ暗な夜の世界に、パシャパシャと綺麗に広がる光の先に見えたのは、とてもかわいらしく微笑んでいる光莉の姿だった。
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