炎火《ほむらび》

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信号が赤になり 車を停めた 横断歩道に4〜5歳位の男の子が 親子3人手を繋ぎ 楽しそうに渡って行く 俺はふと思い出していた 俺はあんな事をして貰った事は無い 俺が4つ位だった 親父は仕事もせず、朝から酒を呑み酔いどれては 気にいらないと母親や俺を殴った 近所の住民は見て見ない振りだった 母親は愛想尽かして俺を連れ 逃げる様に家を出た いつも体中アザだらけだった 母親と電車に乗り俺は嬉しかった 駅を出ると道の両側に 桜の花吹雪が 舞い初め 綺麗だった事を覚えている だが、着いた先で俺の人生が一変した 「海斗 ここで待ってるんだよ 迎えに来るから泣くんじゃない 男の子でしょ! 絶対に動かないで いいね」 そう言うと母親は 早足で振り返る事も無く去って行った 「ママ〜嫌だぁ〜待ってぇ ママ〜」 暫く座り込んで泣いていると 女性が出てきて 声をかけた 「ボク、どうしたの?お母さんは?」 「あっち」 指を指した方を女性は見渡したが、誰も居ない 「ボクのお名前言えるかな?」 「クスン、かいと」 「海斗ちゃんか 偉いね お名前言えたね 幾つかな?」 俺は指を4本出した 「アレぇ?指が3つになってるよ そうか 偉いね海斗ちゃん 私は ちえこだけど、みんなチーコ先生って呼んでるのよ」 小汚いリュックには名札に鈴が付いていて 海斗と書いてあったらしい リュックの中を見てると 古着が詰められていた 此処に捨てられた事に気づいた様だった 「ジュース飲む?お家に入ろうか 海斗ちゃん お友達がいっぱい居るよ 雨降りそうだから 入ろうね」 手を繋ぎ泣きながら トボトボ歩いて行った そこは、ひまわり学園と書かれた 児童養護施設だった.....
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