炎火《ほむらび》

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俺は毎日のように門を見ていた いつか母親が迎えに来てくれると信じていた 小学生になっても 母親は来なかった 子供心に捨てられたと悟った 幼い子らは新しい親に貰われて行った 俺は大人を信じられず 笑顔さえ見せなかった 此処に居るとだんだんと 心が荒んで行く 高校生になった俺は学校や、街で毎日喧嘩に 明け暮れ 何度も何度 園長先生に叱られた それでも誕生日やクリスマス、餅つきと 楽しい事も沢山あった みんな親に捨てられたが それなりに楽しい 大家族の様だった そんな俺も 何とか高校を卒業出来た 卒業すると施設を出て行かねばならない 学園は働く所を見つけてくれた 小さい時から、ボランティアで来ていた 玩具やお菓子等をいつも持って来てくれる 加島のおじさんだった 小学校に入学する時に、桐生と言う苗字は 園長先生とおじさんが考えて付けてくれたのだ みんなに見送られ 加島リフォームと言う会社に 俺は入社した 都心から少し離れた場所に会社が有る そう、あのおじさんの会社だ 今ではオヤジさんと呼んでいる 俺が卒業してから、何年か前にひまわり学園は 廃園になったと聞かされた 道路拡張工事で、子供達も先生達もバラバラに 他の施設に行ってしまった 何とも言えない寂しさが込み上げた..... 「チッ!俺、今更何考えているんだ 昔の事だ あの親子を見たせいだな 馬鹿らしい!」 車を飛ばし会社に着いた ゴミ袋を取り出し 会社の捨てる場所に出した 「もうこんな時間じゃんかよ さてと、飯だ」 俺はいつも行く店に歩いて行った
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