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「18歳のお誕生日おめでとう」
母・晴美が顔の前で小さく手を叩いた。
真緒は「ありがとう」と恥ずかしそうに笑う。
二人の間には3号のホールケーキが置かれている。
「こうやって、二人でお祝いできるのも今年で最後かな?」
「うーん、どうだろうね」
真緒はあと少しで高校を卒業し、この家を出て行く。
母娘で支え合いながら生活をしてきた二人だが、春からはお互い一人暮らしになる。
父親がいない真緒に不憫な思いをさせないよう、晴美は毎日必死に働いた。
参観日や行事にも出来る限り参加した。
真緒もそんな晴美の思いをわかっている。
父親がいないことで卑屈になることはなかった。
「はい、これ」
晴美が徐ろに封筒を差し出し、真緒は不思議そうな顔で受け取った。
封筒には何も書かれていない。
晴美は何も言わずにキッチンへ行った。
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