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「あぁ、まぁ、そんなしょっちゅうじゃないけど……」 「そういえばアヤノちゃんから聞いたけど、梶原くん就職するんだってね」 「しますよ、僕もうすぐ卒業ですよ」 「音楽の、プロの世界目指すのかと思ってたから、アヤノちゃん達と」 「……あいつは、まぁ歌の才能はあると思うし、目指したら良いと思う。けど僕はそこまでじゃないし、それにアヤノは歌詞は書けるけど曲書けないから、作曲出来るヤツと組んだ方が良いんです。僕も作曲出来ないから」  『アヤノ』は僕と同じ大学の軽音サークルに所属していて一年の頃からずっと一緒にバンドを組んでいる。  アヤノがピアノボーカルで僕がギター、あとはベースとドラムの四人で主に洋楽のカバーをしていた。  大学卒業前のサークル最後のライブまでは活動予定はあるが、その後のスケジュールは白紙だった。  今のところ誰も何も言わないけど、卒業したらそのまま解散だろうな。  アヤノは外でもバンドを組んでいるから卒業後はそっちに本腰入れるだろう。 「……そう、なんだ」  何故だか麻子さんは浮かない表情をしている。 「……まぁ、趣味程度でなら続けていこうかなとは思ってますけど、そこそこ良いギター買っちゃってるし」  大学二年の時に手に入れたフェンダーストラトキャスター、今のところ人生で一番高い買い物だ。  当時、同じサークルの奴が僕と同じストラトを欲しがっているのは知っていた。  だけど、どうしてもこれだけは譲れなかった。  僕が先にストラトを手に入れて以来ずっとそいつには睨まれていたけど、しばらくしてそいつはギブソンのレスポールを買ってようやく落ち着いてくれた。  僕が思うにあいつのプレイや声質にはレスポールの方が合うから結果としてはあれで良かったんだ。
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