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私はアンネ。家名はない。
なぜなら、敗戦国の奴隷だからだ。
五年前、私の祖国、アレクシアは隣国のソレイアを攻撃した。
おかしな占いに傾倒して、耄碌していた老王の一声であっけなく宣戦布告し侵略してしまったのである。 一般的に侵略戦争は、攻め込む方が難しい。二年にも及ぶ戦争は祖国の惨敗に終わった。
当時、私はアレクシア南端を治める地方貴族の娘であった。
アレクシアの皇太子は耄碌した父王を地下に閉じ込めて即位。若き王は詫びの品として南部の領地とそこに住んでいた住民をソレイアに献上した。
そう、南部領地は私の父が治めていた土地だ。
若き王は領主である父にありもしない罪をなすりつけて処刑、家族も皆死んだ。
私が無事だったのは、当時南部のアカデミーに通っていて寮生活を送っていたからだ。
今や私がかつてアレクシアの伯爵令嬢、アンネリーゼ・フォン・ドルツヴァイラーであったことを知る人間は、誰もいない。
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