診察室A

2/4
前へ
/4ページ
次へ
「はい、特に不快感があるということが診断の決め手でした。つまりですね、これは本能の変容が深く関わっているわけでして、そういう感性の芽生えが非常に大切なのです。この診察のうちだけで、お顔もめきめき立派になられてーーー、後は手を少し貸していただけますか、うんうん、脈もちゃんと不正常になっています」 「ありがとうございます」 「ただ、お聞きするところ、貴方の患いはバートリ・エルジェーベトの話と通ずる節がありそうですね」 「バトリー・・・」 「バートリ・エルジェーベト」 精神科医は律儀に訂正を挟みます。 「失礼」 「大丈夫ですよ。聞き慣れない名前でしょうから、お気持ちはよくわかります」 「それで・・・、随分、勿体をつけられますね」 男は待ちきれないという様子で、足を揺すり始めます。 「いいえ、その方もあなたのように血液風呂がお好みだったようなのです」 男はその言葉に目を輝かせ、頷きます。 「ほう、で、彼女の目的は」 「やはり、気になりますか」 「えぇ、もちろん。上手くいけば、早々に同志が見つかるかもしれないのですから。こうしてマイノリティの立場になってみますと、本質的な繋がりがより貴重になるものです」 「いやーーーー、しかし、実はその点が非常に退屈なのです」 「というと」 「彼女の理由は俗にいう、不老不死でした」
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加