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「はい、特に不快感があるということが診断の決め手でした。つまりですね、これは本能の変容が深く関わっているわけでして、そういう感性の芽生えが非常に大切なのです。この診察のうちだけで、お顔もめきめき立派になられてーーー、後は手を少し貸していただけますか、うんうん、脈もちゃんと不正常になっています」
「ありがとうございます」
「ただ、お聞きするところ、貴方の患いはバートリ・エルジェーベトの話と通ずる節がありそうですね」
「バトリー・・・」
「バートリ・エルジェーベト」
精神科医は律儀に訂正を挟みます。
「失礼」
「大丈夫ですよ。聞き慣れない名前でしょうから、お気持ちはよくわかります」
「それで・・・、随分、勿体をつけられますね」
男は待ちきれないという様子で、足を揺すり始めます。
「いいえ、その方もあなたのように血液風呂がお好みだったようなのです」
男はその言葉に目を輝かせ、頷きます。
「ほう、で、彼女の目的は」
「やはり、気になりますか」
「えぇ、もちろん。上手くいけば、早々に同志が見つかるかもしれないのですから。こうしてマイノリティの立場になってみますと、本質的な繋がりがより貴重になるものです」
「いやーーーー、しかし、実はその点が非常に退屈なのです」
「というと」
「彼女の理由は俗にいう、不老不死でした」
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