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お敬の事を村の者に正直に話すなどはできず、結局彼女は行方不明という扱いになった。お七と虹彦も村に居続ける理由もないので、居を移すことに決めた。
今は彼の郷里でささやかな小間物屋を開いている。
「あの天城という男……結局何者だったのか」
虹彦が唸った。天城はあの後、お敬の遺体を引きずってどこかへ行ってしまった。彼の連れていた赤子もいつの間にか消えていたし、なんとも面妖な者たちであった。
そういえば、とお七は今更ながらに思い出す。
お札が赤くなった時、虹彦は土間にいたし、お敬は戸の外にいた。座敷にいたのは天城と永遠だけなのである。あのお札が座敷の中にいるものにしか反応しないものだとしたら、彼らはもしかして……。
「まさか、ね」
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