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 仁汰はやはりここにいたのだ。沼地を一周して探してみるが、彼は見当たらない。日も暮れてきて、これ以上一人で探すのは難しそうだ。  そろそろ帰ろうとした時、スマホが鳴った。画面を見ると、乃蒼の名前が表示されている。 「もし、もし?」 「今どこ? もう待ちくたびれたんだけど? というか、何度も電話したのに出ないから心配したんだけど!」 「ごめん、気づかなかった」  スマホの画面には、確かに数回電話がかかってきた形跡があった。どうやら彼女は、海岸通りの路地でずっと咲那を待っていたようだ。悪いことをしてしまった。咲那は電話を切るとすぐに彼女のもとへ向かった。  山を下りるときには、鳥居から続く階段を使った。おかげで迷うことなくすぐに高校まで戻れたが、獣道を通るよりも階段で下りた方が時間がかかる。  乃蒼のいる海岸通りのバス停に着いた頃には、すでに日が暮れて空のオレンジ色のほとんどが藍色に変わっていた。 「もしかして、おもしろ動画でも撮るつもりだった?」 「は?」  バス停に着いたとたん、唐突に聞かれて咲那は声を裏返す。咲那を責めないために乃蒼が考えた冗談なのか、本気なのかは分からない。どう答えていいのか分からないまま、右手に持った右足だけの白い子供用のスニーカーを見せる。
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