-6

3/3

29人が本棚に入れています
本棚に追加
/159ページ
「一応、熱は測っておくんよ。確か、私の寝室の棚にあるはずじゃけん。ほら、おばあちゃんが使っとった化粧棚があるじゃろ?」 「分かった」 「お父さん、咲那がね。体調悪いんだって。そうなんよ。昔からよく風邪ひいとったもんね」  咲那からコップを受け取り、母親は一人で話しながらリビングを出て行った。  咲那は寝室に向かわず、階段を上がって自分の部屋にいく。窓から差し込む街灯の光が、室内をぼんやり照らしていた。  電気を点け、リュックをベッドのそばに投げ捨てる。開けっ放しだったカーテンを閉めた時、なぜか違和感を覚えて少しだけまた開いた。  街灯が照らす道路を見下ろすが誰もいない。気のせいだったかと、咲那は窓のカギを確かめてカーテンを閉める。  今日はもう寝てしまおう。咲那は電気にぶら下がるヒモに手をかけたが、考え直してベッドに倒れ込んだ。  なんとなく真っ暗な中で寝るのは怖くて、その日は電気をつけたまま眠りについた。
/159ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加