【零日目】

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 もう一度呼びかけた時、祠の中から泣き声が聞こえてきた。アスカの声ではない。生まれたばかりの赤ん坊の泣き声だ。  泣き声は徐々に大きくなり、沼地に響き渡る。  アスカの肩越しに見えた祠の戸は、さっき見た時と同じように片方だけ開いている。祠の下を見ると、蛇が張ったような水の跡があった。よく見ると、祠から泥水が流れ出ているようだ。 「アスカ!」  もう一度、咲那は彼女の名前を呼んだ。  赤ん坊の泣き声が咲那の声をかき消す。祠から流れ出る泥水は次第に勢いを増し、濁流に変わった。  赤黒い泥水に巻き込まれ、アスカの姿が見えなくなる。そのまま沼地に流れ込んだ汚泥があふれ出し、咲那の足元が沈んでいく。汚泥に足を取られた咲那は、赤黒い泥水に飲み込まれていった。
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