【三日目】-1

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 中学生のころの彼女は泣き虫で子どもっぽく、乃蒼のよう底抜けに明るい性格だった。会わないうちに成長していた彼女にどこか寂しくなる。 「そんなところにおらんで、こっちに座りんさい」  アスカはベッドのそばに置いてあるパイプ椅子を指さす。病室に入院しているのはアスカだけだ。広々した病室の一番端にあるベッドに、彼女は寝ていた。  椅子に座り、咲那はまじまじと彼女の顔を見る。少し大人びているが、華奢な肩や目元のほくろも、中学生のころと同じだ。やはり目の前にいるのは、竹田アスカに間違いない。  今までどこで何をしていたのか、警察官も彼女の母親も話してくれなかった。別に誰にも止められていないが、聞いていいのか咲那は迷っていた。 「私も、変わった?」  尋ねると、アスカはしばらく咲那の顔をじっと見つめた。 「変わらんね、咲那ちゃんは」  アスカの手が咲那の頬に触れる。少し冷たかったが、指先からは確かに人間の温度を感じた。  本当に彼女は生きている。  こらえきれなかった涙があふれだす。泣き顔を彼女に見せたくなくて、咲那は目元を掻くふりをしながら涙を拭いた。 「学校は? 高校には行けるの?」  鼻をすすりながら聞くと、アスカはおかしそうに笑った。 「高校受験せんといけんけぇ、すぐには無理じゃわ。じゃけん、咲那が勉強教えてや」 「なんでも教えるよ。なにかあったら、私になんでも言って」  咲那は頬に触れたアスカの手を握った。またアスカは、困ったように眉を下げた。これから先の話をするのは良くなかったかもしれない。 「じゃあ、また来るからね」
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