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「お互い様よね。この島はね、みんなで助け合って生活しとるんじゃけん」
豪快に笑いながら、西本のおばあさんは咲那の肩を叩いた。
この島の人たちは、みんなで子どもを育てるのが伝統だと裕子から聞いたことがある。小さな島で、昔から助け合わないと生きていけなかったのだろう。女真島にはその昔、長崎から流罪となったキリシタンが、広島の廿日市の山道から逃げ出し、流れ着いた歴史がある。女神の母沙那信仰も、島がキリシタンたちを受け入れたことから始まったらしい。
島は女神を中心に助け合って生きてきた。
咲那は少しおせっかいでも、この島の空気が好きだった。
「この島の子たちはみんな家族よ。島を出た子たちも、みんなこの島を助けてくれとる。全員があんたの家族なんじゃけぇ、なにかあったらみんなに相談しんさいよ」
西本のおばあさんの目じりのしわが深くなる。彼女は咲那の祖母が亡くなってからも、こうして孫のようにかわいがってくれていた。
たまに島では失踪事件があるが、それ以外に大きな事件は起こったことはない。なに不自由なく暮らせているのも、島の人たちのおかげだ。
「アスカちゃんも帰ってきてほんまによかったね。あんた、あの子と仲が良かったじゃろ?」
「ほんとうに、こんなこと言っていいのか分からないんですけど、元気に帰ってきてくれてよかったです」
「今回は遅かったねぇ。みんなおらんようなってもすぐに帰ってくるのに。あの子は昔っから少しのろまなところがあったじゃろう? そのせいで遅れたんじゃわ」
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