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どうやら道源に報告されるのは困るらしい。
ならば最初から大それたことなどしなければ良いのに。
景樹は一気に鼻白んでいくのを感じながら、千景の言葉の続きを待った。
「話す、話すよ、話せば良いんだろ」
「別に俺たちは聞きたくないが」
話しにならない。
空蝉を促して歩き出す。
空蝉はまだ残念そうな顔を作っていたが、大人しく景樹に付いてきた。
「待ってぇぇぇえええ!」
千景が絶叫した。
「聞いてください、お願いします!」
空蝉と同時に振り返る。
千景は床に手をつき、哀れみを誘う悲壮感たっぷりの表情でこちらを見上げていた。
最初からこうしていれば良いものを。
「盗賊団?」
空蝉と景樹の声が重なった。
「そうだよ。ったく、舐めたまねしやがって」
ぜってぇ許さねえと息巻く千景を、すかさず葵が指さした。
「そこ、手が止まってる!」
「はいはい、分かってますよ」
千景はうんざりしつつ、床板に釘を打ち込んだ。
破壊した部分を修復させられているのである。
玄翁を繰りながら語られたのは、ここ最近、巷で暴れている盗賊たちの話だった。
見境のない盗賊で、庶民が好む飲み屋から、商家の娘たちから人気の小物屋、貴族御用達の衣屋まで、手当たり次第に狙っているという。
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