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裏口で人影が揺れている。
親父は一足飛びで裏口へ突進し、扉を突き破った。
「わっ!」
驚く声。
しかしもう遅い。
「覚悟ぉぉぉおおお!」
打ち据えようと木刀を翳したところで、親父ははたとした。
相手は見慣れた小刀を、鞘に入れたまま構えている。
木刀は半端に力を残したまま、かん、と小刀にぶつかった。
目の前にいるのは女。
よく見知った、お姫様。
「びっくりした」
きょとんとしているが、それはこちらの台詞だ。
「空蝉様?」
何故ここにと親父が問うと、空蝉は壊れた裏口をちらちら気にしつつ、頬を掻いた。
「戻ったので挨拶に。その……。驚かせてしまったようだな」
「……」
夜風が2人の間を通りすぎた。
ただの木片となった裏口が、きぃ、と痛みを堪えるように鳴いたのだった。
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