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手段も乱暴なもので、たまたま居合わせて怪我を負った人間もいるそうだ。 その盗賊団は、こともあろうか瑞泉寺の烏天狗を名乗っている。 文句があれば、大僧正道源に言ってみろ、と。 事の次第を知った烏天狗たちが道源に報告し、都のことならば空蝉姫にということで、千景が遣わされたのであった。 「このままじゃ瑞泉寺の名に傷がつく。なにより、道源様の面子が丸つぶれだ。だがな!」 千景は射抜く勢いで、玄翁を空蝉に向けた。 「この一大事をお前に預けようってのが気に喰わねえ!」 弱っちいくせに。 お前のどこが良いんだよ。 言ってやったとばかりの得意顔である。 景樹は空蝉を腕の中に隠した。 「なら来んな」 「おうおう、来たくて来たんじゃ……」 ねえ、と言いかけて、千景は前に倒れた。 せっかく張り直した床板に、顔がめり込んでいる。 頭を踏みつけた葵は、びっくりした顔をして足をどけた。 「……失礼。良いとんかちだなと思ったら、人でした」 子供だてらに出来た子である。 やるな、と景樹は葵に目配せをした。 景樹様こそ、と葵も片目を閉じて応じる。 千景はわなわな震え、火山の噴火のように激しく体を起こした。
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