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「俺をどこの誰と思ってやがる!」
「ふむ」
空蝉が神妙に頷いた。
「つまり、その盗賊を取っ捕まえて、瑞泉寺の烏天狗たちの無罪を世に知らしめれば良いのだな」
「そうだけど……そこかよ!」
俺の声は誰にも届かないのか、と千景は両手で激しく床を叩いた。
空蝉はにっこり笑って頷いた。
「聞いている。千景、そなた、当分この屋敷に留まりなさい」
あまりの衝撃に、3人ともが石になった。
葵などは特に衝撃的だったのだろう、口が丸を通り越して四角くかっ開いている。
最初に口火を切ったのは、やはりと言えばやはり、千景であった。
「ふざけんな!帰る!」
帰る、の部分で葵が鼻歌を歌いながら部屋を出ていこうとした。
それを羽交い締めにし、千景は慌てて訂正する。
「屋根と壁治したら帰る!」
景樹は空蝉の両肩を掴んだ。
「空蝉、なにもお前に乱暴なこと言うような奴を、助けてやることないんだ」
傷つくだろうと諭せば、空蝉はまた困り顔で首を傾げた。
「うーん、でもねぇ。烏天狗の無実を晴らすのは、烏天狗でなくてはならないと思うのよ」
そのために道源様も千景を寄越したのだろうし。
空蝉は千景の方へ前のめりになり、床に手をついた。
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