3

8/10
前へ
/101ページ
次へ
「そなたの名を聞いたときから、こう」 こう、と喉を擦る。 「ここにつっかえていたのだが、ようやく思い出した。そなた、烏天狗は烏天狗でも、三羽烏の1人であろう?」 三羽烏。 瑞泉寺の僧兵の中でも精鋭中の精鋭である。 こいつが、と珍妙な視線を景樹と葵から受け、千景は居心地悪そうにきょろきょろした。 「そうだが」 「ならやはり、道源様も私と同じ考えということよ。でなければそんな秘蔵っ子を、易々私に預けるわけないわ」 秘蔵っ子という言葉に、千景が唇を引き結んだ。 気まずそうに目をそらし、心なしか首を縮めている。 どうやら照れているらしい。 そんな彼に、空蝉はとどめの一撃を食らわせた。 「道源様の宝物の力、私も見てみたいわ」 秘技、人たらし。 無邪気に請われ、断れる男はいない。 景樹は仏頂面で鼻を鳴らした。 同じようなことを、どこかで言われた気がしたのだ。 「なんなんです、この展開」 葵が肩を怒らせた。 千景が過ごすための部屋を準備するよう言われ、景樹たちは渡殿を歩いていた。 千景は今後のことを話すため、空蝉の部屋に残っている。 景樹も苛々しながら同調した。 「だいたい俺がいるのに、他の男を泊めなくても」 葵がはっとした。
/101ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加