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そうですよ、と右足を強く踏み出す。 「なんでもっと反対しなかったんですか!」 「それは……」 景樹は口ごもった。 「俺が止めるのは、なんか、ちょっと……」 あまりのことに、葵の顔がみるみる歪んだ。 景樹様、と音もなく口が動く。 「そう、ですよね。男は包容力と硬さだって、実家の女たちも言っていました」 景樹は思わず2度見した。 子供になにを教えているのだろう。 しかし葵の表情は真剣そのものである。 意を決したように強い視線を前に向けると、歩みを止めた。 「景樹様。いえ、景樹さん」 つ、と景樹を見上げ、 「僕は今まで景樹さんのこと、空蝉様に拾われた、ただの幸運な野郎と思っていました」 「え」 とんだぶっちゃけである。 少なからず傷ついた景樹に気づかず、葵は続けた。 「ですが、貴方は真に空蝉様を想ってくださっている。僕はそういう方をこそ、待っていたのですよ」 遅ればせながら、空蝉様を無事に連れ帰ってくださり、ありがとうございました。 この時景樹は、葵の笑顔を初めて見た気がした。 瑞々しい緑の葉が、朝日の中で輝くような、はつらつとした笑顔であった。 「これからは共に空蝉様をお守りしましょう」
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