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どろどろと雷が唸った。 1拍遅れ、雨粒が地面で弾ける。 それは次々に落ちてきて、やがて勢いを増した。 辺りはあっという間に白く霞み、数歩先すらよく見えない。 雨水を凌ごうと、店主は玄関の戸を閉めかけた。 その時だった。 「もし」 いつの間にいたのだろう、男が立っていたのだ。 袈裟頭巾に薙刀、足元は泥だらけの足駄。 ああ、寺の坊さんか、と店主は頭を下げた。 「これはこれは。雨に濡れるといけませんから……」 言葉を紡げたのはそこまでである。 気づくと地面に昏倒していた。 なにやら頭に衝撃があったような。 見上げると、何人もの僧が立っていて、男を、或いは店内を伺っていた。 「行くぞ」 「早くやらねば人が来る」 「なに、この雨で多少の音は聞こえんさ」 そして無遠慮に店へ入ってくる。 そこで店主はようやく、彼らが噂の盗賊だと気づいた。 早く助けを求めねば。 投げ出した手に力を込めた。 すわあぁぁぁ。 雨の帳の向こうに、都は暗い影を落としている。 踏み出した先からぬかるみに飲み込まれ、草履は既に意味を成していない。 景樹は前を行く千景を仏頂面で眺めた。
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