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4
どろどろと雷が唸った。
1拍遅れ、雨粒が地面で弾ける。
それは次々に落ちてきて、やがて勢いを増した。
辺りはあっという間に白く霞み、数歩先すらよく見えない。
雨水を凌ごうと、店主は玄関の戸を閉めかけた。
その時だった。
「もし」
いつの間にいたのだろう、男が立っていたのだ。
袈裟頭巾に薙刀、足元は泥だらけの足駄。
ああ、寺の坊さんか、と店主は頭を下げた。
「これはこれは。雨に濡れるといけませんから……」
言葉を紡げたのはそこまでである。
気づくと地面に昏倒していた。
なにやら頭に衝撃があったような。
見上げると、何人もの僧が立っていて、男を、或いは店内を伺っていた。
「行くぞ」
「早くやらねば人が来る」
「なに、この雨で多少の音は聞こえんさ」
そして無遠慮に店へ入ってくる。
そこで店主はようやく、彼らが噂の盗賊だと気づいた。
早く助けを求めねば。
投げ出した手に力を込めた。
すわあぁぁぁ。
雨の帳の向こうに、都は暗い影を落としている。
踏み出した先からぬかるみに飲み込まれ、草履は既に意味を成していない。
景樹は前を行く千景を仏頂面で眺めた。
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