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遥か昔。皇家の始祖となった人々は、先住民を虐殺し、領土を略奪した。 古の民はこれを深く怨み、代々帝の正室が産んだ女子を呪っている。 空蝉は策略により、今上帝の長女の依り代となった。 それを秘匿したい連中は、空蝉が活発に動き回るのを良しとしない。 どこかで命を落とせば好都合だと、つけ狙う者は多いのだ。 その結果、空蝉は間者をただの間者などと表す始末。 更には自分を傷つけることに躊躇いがない。 それは良くないことなのだと、いつか伝われば良いが。 景樹の密かな課題である。 葵は最後の腰紐を結ぶと、暗い陰を目元に落とした。 「なにも体だけではないのです」 着付け道具を道具箱にしまいながら、葵はため息混じりに言った。 「朝廷は、空蝉様の心も傷つけるのです。もし関わらなくて済むのなら、そうして欲しいくらい」 でも。 「空蝉様はあそこを戦いの場に選びました。僕に出来るのは、戦うための武器を準備したり、整えたりすることだけです」 葵はそれが悔しくて悔しくてたまらないのだという。 「景樹様なら大丈夫ですよ、きっと」 「そうか?」 「はい。多分そうやって突っ立っているだけで、皆逃げ出します」 「……」 それは自身の力ではないのではないか。 というか、これは遠回しに人相が悪いと言われているのではないか。
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