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景樹はなんとも言えない気持ちでまばたきを繰り返した。 葵は礼儀正しく、折り目正しい。 出自により、大勢の人から鬼と蔑まれる景樹に対しても、紳士的に接してくれる。 しかし時折毒が混じるような。 当の本人は爽やかに笑っていたりするから、無邪気なのか悪意があるのかが掴めない。 「あとはお教えした礼儀作法を忘れなければ、すんなり終わりますよ」 その礼儀作法が大変だった。 お辞儀の角度から手の置き場、足運び、姿勢と、景太の頃は決して使わなかった筋肉と頭を使った。 お陰で今も若干内腿や二の腕が痛む。 貴族は日々こんなことをこなしているのかと思うと、ある意味恐ろしかった。 「今日は白羽様に謁見するのですから、むしろそこだけはしっかりして欲しいところです」 白羽は今上帝の長女。 空蝉が呪いを肩代わりしている相手なのだ。 いくら彼女の妹とはいえ、複雑な気持ちになってしまうのは許して欲しい。 ところが、葵は違うようだった。 「白羽様は、空蝉様のことをよく慕っておいでです。空蝉様が手放しで家族と呼べるのは、多分彼女くらいですよ」 「そうなのか?」
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