受付ロボット

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 ロボットからメールが来て一年近く経った。  彼はメールを眺めながら、どうすればロボットに再会できるか考えていた。レンタル眼鏡が反応し、すぐにメールが届く。彼も最近レンタル眼鏡のモニターになって知恵を借りている。  メールは展示会の申し込み案内であった。昨年と同様に申し込むと予約完了メールが届き、一階の受付に立ち寄るようにとのことであった。  当日、一階の受付に立ち寄ると、受付ロボットが居る。レンタル眼鏡が反応し、一年前に初期化されたロボットだと教えてくれた。初期化されてから研修を受け、受付を担当するようになったらしい。 「お久しぶりです」と彼が挨拶すると、「お待ちしていました」と受付ロボットが笑顔で答える。受付に電話があり、開発部のスタッフが来るという。  彼と受付ロボットは開発部に案内された。予想外の展開に開発部は動揺を隠し切れない。  初期化して以来、データを採取して入念に監察していたはずなのに、彼が受付に立ち寄った瞬間に、受付ロボットのデータが一年前と同様な異常値を示した。  実はロボットの眼に使われているレンズはレンタル眼鏡の会社製なので、眼鏡とレンズを通じて会話することが出来るのだが、開発部のスタッフは知る由もない。 「完敗です。同伴解禁します」と開発部から許可が出た。  ロボットの充電装置を受け取り、彼は受付ロボットを同伴し家路についた。見送るロボットたちからは祝福の嵐。他人からはロボットが見えないのは昨年と同様である。  家に着くと彼は黒い布で作られた降る降る坊主を吊るした。  帰してなるものかと、やらずの雨が降る。  開発部はロボットのデータ採取と解析に追われている。  彼と彼女は眼鏡とレンズを通じて会話している。  やらずの雨が降りしきる  来る日も来る日も降りしきる
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